公益財団法人 全日本空手道連盟
会長 笹川 堯
謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年も皆様にとって素晴らしい年となることをご祈念申し上げます。
さて本年は昭和から数えて100年の節目の年であります。日本国の成長と共に社会は大きく変貌してまいりましたが、私たち日本人の根底にある精神性は、武道という文化の中に変わることなく受け継がれていると信じております。
全日本空手道連盟は空手道を通じて、国民の福祉向上と青少年の健全なる育成に一層の努力をしてまいる所存です。
新たなるスローガン
空手道は武道でありますが、今や世界の空手となり特に競技面において普及発展を遂げております。国と地域の連盟は200を超え、世界選手権、アジア選手権、東アジア選手権のほか、プレミアリーグやシリーズA、ユースリーグなどの国際大会も定着しました。一昨年はプレミアリーグ福岡2023を全日本空手道連盟が主管となって開催しております。
このような状況を俯瞰すると、空手道においてはもはや“武道スポーツ”という領域が確立したと認識しています。ここで大切なことは、スポーツの魅力に文化としての武道、武道ならではの精神性をどう残していくかということです。
全空連では2022年度から「伝統に革新を(ブレイクスルー)」のスローガンのもと、伝統を守りつつ新しいことにチャレンジしてまいりました。本年からは、人格形成を大切にする武道としての空手道により焦点を当てた、 “磨かれていく、自分。”“Grow Up+KARATE”を新たなスローガンとしました。このスローガンは空手道を通じて仲間と共に成長していく喜びを表しています。世界で競技として発展し続ける空手道に、全日本空手道連盟は武道としての価値を大切に守り続け、人格形成に資する空手道を全国に発信してまいります。
全4部作のキービジュアルを発表
新たなるスローガンを広く皆様にお知らせする方法として、キービジュアルを作成しました。“磨かれていく、自分。”を言葉とイメージ画像でお伝えするもので、様々な年代の方に共感してもらえるように空手道の価値を4つのパターンに分けて表現しました。
「ぼくね、ちゃんとあいさつができるようになったよ。」
「空手は、私と家族を笑顔にしてくれた。」
「空手が私を強くしてくれる。」
「毎日、着実に。一歩ずつ。」
これらの言葉が、生き方が多様化する今の世の中においても、一人一人にとっての空手道の価値を伝えるものとして多くの人に届くことを願っています。
第1回ワールドカップを制する
2024年11月22日から24日に、世界空手連盟(WKF)主催による第1回ワールドカップが、スペイン、パンプローナ市で開催されました。この大会は国別団体戦に特化した初の試みであり、今後各年毎に個人戦の世界大会と団体戦の世界大会が開催されることとなります。空手道には組手種目と形種目がありますので、団体戦では男女別合わせて4つのメダルを競うことになります。
世界の競技レベルは近年目を見張るほど向上しており、特に男子組手においては、空手道母国である日本にとっても常勝することは大変困難な状況です。しかし昨年は全空連、強化委員会そして強化選手が一丸となって懸命に強化に取り組みしました。その甲斐あってか、9月のアジア選手権では9年ぶりに男子組手団体戦で金メダルを獲得することができました。
そしてこのワールドカップにおいては、4種目のうち3種目で金メダル、男子組手団体戦も銅メダルに輝き、日本の競技力をあらためて世界に示す結果となりました。全身全霊で戦ってくれた選手とそれを支えた強化委員ならびに強化コーチに心から称賛と感謝の意を伝えたところです。年の初めに良い報告ができましたこと、大変ありがたく思います。
学校教育における空手道
さて、昨年当初の抱負の一つに、学校教育における空手道の普及推進をあげました。そして特別支援学校における取り組みについても成果が出始めていると報告したこところです。
特別支援学校は全国に約1,000校ありますが、昨年末で空手道を授業に取り入れた学校は63校にのぼります。学校訪問プロジェクトでは、特別支援学校からのオファーが半数を超えました。
また、不登校児童生徒の増加は教育界の大きな課題となっていますが、国の政策で不登校に対応した「学びの学校」が開校し始めました。ここでも空手道の授業が広まっているところです。指導法研究事業にも力を注ぎ、広くそして深く学校教育における空手道の価値を高めてまいります。青少年の健全なる育成に、これからも全力を尽くします。
デフリンピック開催
本年は東京2025デフリンピックが開催されます。デフリンピックとは国際ろう者スポーツ委員会が主催し4年毎に開催される「きこえない、きこえにくい人のためのオリンピック」です。東京を会場に21競技が開催されますが、武道では柔道と空手道が採用されています。空手道競技は11月23日から25日の3日間、東京武道館を会場に開催予定です。現在は東京都、全日本ろうあ連盟、全日本ろう者空手道連盟と協力して、全空連もデフリンピック空手道競技成功に向けて始動しています。全日本空手道連盟はインクルーシブな社会の実現にも積極的に貢献してまいります。
新年にあたり、空手道の価値、空手道を通じて社会に貢献することを主眼に、現状と抱負を語らせていただきました。全空連は会員の皆様と共に、本年も力強く前進してまいります。